もし、ひとつでも当てはまる部分がおありでしたら、この続きをご覧ください。
病院組織は、たくさんの「人」の集合体です。 それらは複雑に絡み合っており、一筋縄ではいかないことも多々あります。
一度、絡み合ってしまったものは、付け焼き刃の対策では解くことができません。
ですから、いかに人と人とのつながり・連携を良くしていくかが、病院経営にも大きく関わってきます。
「どのように変わっていくのか?」ということについて3つの導入事例をご紹介します。
入院患者に対して夕方になってから薬に関する指示を出すドクターがいるために、そこから薬剤師が薬を用意し、看護師が服薬補助を行うという流れで慢性的に残業が発生していた…。
ドクターに対し、グループコーチング研修を実施。
タイムマネジメントの実践方法を指導したり、業務の効率化に関する意識を向上させたり、看護師や薬剤師などの立場になって考える時間を取ることで、一人ひとりの意識とスキルの改革を行った。
入院患者の服薬指示は基本的に午前中までに終わらせるというルールを徹底することで、残業が減り、看護師や薬剤師の労働環境が改善。
人件費の無駄もなくなった上、「あのドクターのせいで帰れなかった…」といった不満も生まれなくなり、ドクターと看護師、薬剤師間の信頼関係の回復にも繋がった。
勤務時間に制限のあるママさん看護師・薬剤師からも好評で、「これなら続けられる!」と、離職率も低下した。
副院長という役職の方が5名いるものの、集まって会議を行ったり、連携を取ったりすることもなく、個人的に院長や理事長に何かを進言することもなかった。
本人たちが経営に携わる機会がなかったため、当事者意識があまりなかった副院長が多かった。自分たちが何か言っても病院は変わらないと思っていた。
月に1~2回、副院長5名を対象としたワークショップを開催した。
最初は院長への不満とも取れる内容の発言が多かったものの、次第に「それを自分たちの手でどう変えていくか?」という建設的な議論ができるようになった。
副院長という立場だからこそできることを見出し、病院を変えていくのは自分たちだという意識が芽生えた。
1年半に及ぶワークショップの後半は、どんどん白熱した意見交換ができるようになり、議論するだけでなく、BSCマップ(長期事業計画)作成のための合宿も行い、思いをカタチにする手法も同時に学んだ。
院長には何も言えない、言うつもりもない…という状態から、副院長5名で協力して各医局の現状をヒアリングして取りまとめることで院長・理事長クラスの現場把握に貢献するようになった。
また、経営に携わる意識が強くなったことから、副院長が率先して中長期に渡る事業改善計画を作成した。
患者満足度を上げるための取り組みや、ベッドコントロールの業務効率改善案など、誰がリーダーシップを発揮して進めるべきかの責任の所存が曖昧で誰も取り組まなかった経営課題に対して、副院長達が自分で考え、自走できる組織へと変化した。
職員数1,000人近くの大病院が抱えていた問題は、一言で言えば職員間の連携の悪さ。
理事長・院長・副院長・看護部長をはじめとした幹部と一般職員の間には大きな隔たりがあり、お互いが思ったことを言えない環境となっていた。また、同じ職種同士であっても部署を越えたコミュニケーションの機会がないため、実務上も上手く連携を取ることができていなかった。
連携の悪さから無駄な残業が発生する、衝突が起こる、不満感が募り、やがて退職する…といった問題が表面化していた。
OSTによる職員間連携の改善・強化を行うことに。
OST(オープン・スペース・テクノロジー)って何?からスタート。
OSTとは、話し合いたいテーマと参加者を募り、自主性を尊重した自由な話し合いの場を設けて改善活動を行うこと。まず、所属長クラスを対象とした自由検討会を実施してから、OSTを職員全体に広められるよう段階的に活動を行った。
①所属長クラスへの働きかけ
所属長・所属長代理をメインに参加者を選出し、“自由検討会”を実施した。各々話し合いたいテーマを提示し、各テーブルに分かれ計2時間ほどのダイアログを実施。日ごろ関わらない部署や年齢の職員同士が思い思いに意見を共有しあった。そして、この会はグループごとに分かれ、自主的に定期開催される運びとなった。
②全職員への働きかけ
院内全職員を対象に自由参加を呼び掛け、また開催前に「OST説明会」を実施。聞き馴染みのないものなので、どういったことを行う場かを質疑応答に答えながら丁寧に説明を行った。
毎回最初だけ趣旨の説明を行い、以降はテーマの提案・選出などは参加者を信頼し、自主性に任せた。回数を重ねるごとに、参加人数を増やすために院内にポスター掲載・チラシの配布なども行った。
①所属長クラスによる自由検討会の成果
自由検討会終了後、【職場活性化チーム】【チームワーク向上チーム】【業務改善チーム】など5チームが誕生。1ヵ月に1回、または2週間に1回ペースでチームミーティングを自主的に開催。
「院内の問題の掘り起こし」から、「自分たちに何ができるか」「どのようにすればよいか」などを探求する場が院内に増えていった。
②全職員が対象のOSTの成果
毎回この場を楽しみに参加するメンバーが固定されていった。
参加者がOSTの意義や効果をはっきりと認識し、「しんどいなら、気持ちを発散しに行こうよ」と他の職員に呼びかけを行い、新たなメンバーを連れてくるなど、「院内の心地のいい空間」として自主的にOSTの宣伝活動に励むように。当初3名からスタートした会は、20名ほどに増えた。
いかがでしたでしょうか?
人の意識や関係のほころびが改善されると、結果として、利益率アップや離職率の低下という具体的な成果にも繋がっていきます。 コミュニケーションがきちんと取れており、「個」を補い合える組織になると、実はあらゆる経営課題をクリアすることに繋がります。
- 残業の削減
- ベッドや手術室など院内設備の効率的な活用
- 現場の職場満足度の向上
- 離職率の低下
- コスト削減
- 利益率向上
- 患者様へのホスピタリティ向上
このようなことが可能になります。
想像してみてください。
さまざまな課題を解決するためには、その根っこにある人の思考や想いにアプローチして変えていかなければ、根本的に組織を変えることができません。
もちろん、やり方を変えていくことも大切なことです。
しかし、土壌が整っていないうちに水ばかりあげても意味がありません。
組織は人の集合体である以上、組織の問題=人の問題であると言えます。
病院組織には通常、理事長・院長・事務長といったさまざまな部門のトップがおり、さらに部門のトップ、サブなど様々な役職者、チームが編成されています。
人数が多く、縦横の構造や組織の関係性が複雑なのが、病院組織の難しいところです。
たとえば…
- 本当にトップの意思はきちんと伝わっていますか?
- 現場の声はきちんと聞けていますか?
- 部門の垣根を越えたコミュニケーションや
情報共有、連携は取れていますか?
もし心当たりがあるとしたら、変革するときがきているかもしれません。
組織の問題を解決するためには、縦横斜めと様々なアプローチで変革をしていくことが有効です。
成功事例が溜まっていけば、どんどん病院組織変革は良い方に進んでいきます。
どこからでも着手することが可能です。
- 現場スタッフの意識改革
- 部署間連携や相互理解の機会創出
- 局長、部長クラスのマネジメント力の強化
- 理事長、院長などのトップマネジメントのサポート
…など、どの面からでも始められます。
優秀な「個」が集まっているのに、なぜかうまく行かない… 一体なぜなのでしょうか?
それは、一人ひとりが最大限の力を出せる組織になっていないから。
実は環境が整っていない、という組織の問題なのです。
たとえば、こんな想いを抱いている人はいませんか?
「自分の力では何も変わらない…」
院内にそんな無力感、孤独感を感じている人はいないでしょうか。
現場を改善したいという気持ち、もっと働きやすい環境にしたい、もっと患者様に喜んでもらいたい、という純粋な心の芽生えが、もしかしたら摘み取られているかもしれません。
もし、一人ひとりの気づきや思いといった大切な芽が摘まれてしまう組織だとしたら…今すぐ変えたほうがよいと思いませんか?